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IBMiコラム2026.04.22

IBM i のウンチクを語ろう:その117
- IBM i ユーザーのアプリケーション開発テクノロジー最新事情 -

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。本来は「他人は他人、自分は自分」であるべきなのかもしれませんが、何かのテクノロジーを採用しようとすると、周囲の人達は何をやっているのだろう、と「隣人」が気になるのは無理からぬことです。多くの人達が採用するテクノロジーであれば、機能がより一層充実することが期待できそうですし、保守サポートにおいてメーカーは無下にはできないはずだ、という思惑も働きます。

IBM i の各種ソリューションを提供している米Fortra社はそんな関心に応えようと、年に一度全世界のIBM i ユーザーに向けてサーベイを実施し、その結果を「2026 IBM i Marketplace Survey Results」として公開しています。当コラムにおいても過去に何度か紹介したことがありますし、IBM i の開発部門も製品の将来を策定してゆくために参照していることから、世界のIBM i 市場を知るための必読の書だと言えるでしょう。日本語版が無いのは残念ではありますが、多少のぎこちなさはあるものの、ブラウザの翻訳機能を使えば要点を把握するのに十分役立ちます。

今回はプログラム言語や開発ツールなどの観点から、IBM i ユーザーの現在を眺めてみようと思います。サーベイ結果について忘れないでおきたいのは、回答者の83%が北米とヨーロッパに偏っていることです。アジア太平洋地域全体でも4%を占めるに過ぎませんので、日本の現状はほぼ反映されておりません。むしろ日本の何年後かの姿が垣間見えている、と捉えたいと思います。

アプリケーションの新規開発時に使用するプログラム言語は何ですか?

まずは定番中の定番のデータを見るところから始めましょう。この設問は既存アプリケーションを対象にした設問ではなく、これから新たに開発することを前提にしています。結果は以下グラフのとおりでした。

不動の一位は90%近くを占めたRPG言語、それにデータベース・アクセスのためのSQLが続きます。RPGの将来性に対する不安を抱く方が多いことから、年々このシェアはごく僅かながら低下する傾向にはあるのですが、相変わらず他の言語を圧倒し続けています。FF RPGの浸透やVS Codeによるサポートなど、RPGのモダナイゼーション(現代化)が進んでいることが奏功しているのでしょう。これにIBM Bobのサポートが公式に始まり、言語そのものの仕様よりも資産継承性とか安定性などといった価値の方が重視されるようになれば、上昇傾向に転じるのかもしれません。

もう一点これまでと大きく変わったのはJAVAのシェアです。前年の41%から32%、激減と言って良いでしょう。周辺テクノロジーの裾野が広く使いこなすのは易しくはないこと、資産継承性は無いためにプログラムの塩漬け状態化という現実が目立つようになってきたこと、さらにオラクル社によるライセンスの有償化が拍車をかけているのでしょうか。またRPGと比較した時に、基幹業務バッチ・ジョブのパフォーマンスが劣るといった評価を何度か耳にしたこともあります。これはJAVAの問題と言うよりも、RPGが最適化されていると考えた方が良いのではないかと思います。いずれにせよJAVAは、TIOBE Indexという、IT関係者全般を対象とするプログラム言語の人気ランキングにおいても右肩下がりが目立ちます。

ちなみにRPGと言っても大雑把には3つの世代があることはご存知と思います。かつてのAS/400の時代から続いているRPG/400(RPGⅢ)、1994年に登場した初期版としてのILE RPG(RPGⅣ)、そして2013年にILE RPGの進化版として登場したFF RPG(フリーフォームRPG)です。初期のILE RPGはその後のフリーフォーム版と区別するために、固定フォーム版とも呼ばれます。

文書としては公開されていませんが、このサーベイ結果を説明するウェビナーでは、RPGの世代別シェアが報告されています。RPG/400が8%、初期のILE RPGが22%、FF RPGが70%でした。RPGの中における、世代をまたいだモダナイゼーションが進んでいることがわかります。

アプリケーションの新規開発時に使用するプログラム言語は何ですか?

ちなみに日本においてはアイマガジン社が同様のサーベイを実施しています。RPGがトップであることに変わりはありませんが、内訳をみると上記サーベイの逆順、すなわちシェアの大きい方からRPG/400、固定フォームILE RPG、FF RPGという結果が出ているばかりでなく、RPG/400を継続利用するとした方が多数派を占めています。またデータベース利用においても、業界標準のSQLのシェアが低いままに留まっていることから、ネイティブ・アクセス、すなわち旧来のレコード・レベル・アクセスが多数派を占めていることがわかります。全般的に言語のモダナイゼーションはあまり進んでいないと言えそうです。実際にお客様と話してみると、現状に対する懸念の声を聞くことが多いのですが、スキルを備えた人員を確保できないために、現状維持せざるを得ないといった傾向を感じます。

利用中の開発ツールは何ですか?

まずはFortra社のレポート内容を以下グラフに見てみましょう。全体的には大きな偏りは見られませんが、昨年比でADTSは緩やかなシェア低下(マイナス6ポイント)、VS Codeは急速なシェア上昇(プラス21ポイント)、RDiはほぼ変わらず(プラス1ポイント)という結果でした。

Fortra社は、VS CodeはいずれADTSを凌ぐと見ています。無償であることに加えて、FF RPGとの相性が良いので、プログラム言語のモダナイゼーションと同期しながらシェアを伸ばすだろうと考えているようです。

ただ世代的に最も古く、FF RPGと相性がよろしくないADTSのシェアが最大なのは意外に思えるかもしれません。RPGの各世代の中ではRPG/400が歴史的に最も長いことから、モダナイゼーションが進んでいるとは言っても、その稼働中プログラムの本数は未だに最多なのでしょうか。そうなると保守・改修するためのツールとして、RPG/400と共にあったADTSが使用されるのは自然の成り行きだと言えるでしょう。VS Codeでは桁位置を管理できないなど、RPG/400との相性は必ずしもよろしくありません。

利用中の開発ツールは何ですか?

日本におけるサーベイにおいては同様の設問はありません。ただ、RPG/400のシェアが新規開発においても相変わらず高いことから、ADTSが主力の地位にあるだろうことは容易に想像できます。逆にFF RPGは十分に浸透していないことから、それに伴ってVS CodeのシェアはFortraのサーベイ結果を大きく下回るものと予想されます。

プログラム言語と開発ツールの現状から言えること

これまでに目にしてきたデータから、どのようなことが言えるのでしょうか。新たな開発案件においては、FF RPGやVS Codeの採用など、世界的にはプログラム言語や開発ツールのモダナイゼーションが進んでいる様子が見られました。IBM i のテクノロジーはユニークであると言われてきましたが、スキルある人材を確保し易くするために、IBM社が取り組んできたオープン化の成果が表れつつあると言えるでしょう。その一方でADTSのシェアの高さが示唆するのは、膨大な量の既存アプリケーション資産が、未だにモダナイゼーションから取り残されている可能性でした。この保守的傾向は日本においてはより顕著であろうと考えられます。

モダナイゼーションのためにはスキルを備えた人が高い生産性を持って取り組まなくてはならないのですが、そもそもIBM i のユーザーはこの点に関して、どの程度の課題意識を持っているのでしょうか。ITに関する懸念事項を見ればその優先度がわかるはずですね。

今後のITを計画するにあたっての懸念事項は何ですか?

以下グラフが示すのは懸念事項トップ5項目を抜粋したものです。今回サーベイの最大の変化は、2017年から昨年までの9年間にわたってトップの座を占め続けていたサイバー・セキュリティが2位に陥落し、代わりにIBM i スキルがトップに躍り出たことです。手元にある過去の資料を見ると、IBM i スキルに対する懸念を示したサーベイ回答者は概ね半数という時期がしばらく続いていたのですが、2024年以来急速にその意識が高まっています。

ITを取り巻く課題はいくつもあるわけですが、1・3・5位の各項目に着目してみると、以下のような一つのストーリーが見えてくるようです。

永続的にビジネスを支えてゆくためには、アプリケーションを陳腐化させることなく、適宜モダナイズ(現代化)しなくてはならない。このためにはスキルある人材の確保が必須である。人を簡単に増やすことはできないとしたら、その生産性向上を図るしかない。現時点でその切り札になる可能性を秘めているテクノロジーが生成AIなのだとしたら、これをうまく活用しなければならない。

アプリケーションのテクノロジー進化のスピードが遅い日本においては、生成AIに対する期待度はおそらく世界的にも極めて高いに違いありません。

今後のITを計画するにあたっての懸念事項は何ですか?

これまでに、なぜBobを提供しようという構想に至ったのかという説明を、開発部門から聞く機会を得たことがありました。印象的だったのは、上に述べたような市場動向やユーザーの課題を参照しながら、製品機能強化の方針を舵取りしてゆこうという姿勢が示されていたことです。特に新規開発よりも、既存アプリケーションのモダナイゼーションの方に重心がありました。遠くAS/400、さらにその先のSystem 38の設計において、ビジネス要件に基づきながら備えるべきアーキテクチャを見定めていった当時の精神が、生成AIの時代においても生き続けているのですね。日本のIBM i ユーザーの間において、Bobがアプリケーションを取り巻く課題解決の切り札として浸透すると良いなと願っております。

ではまた

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社を経てベル・データ株式会社に入社。IBM 時代にエバンジェリストとして IBM i の優位性を社内外に訴求する活動を行う傍らで、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わりを論じる講座を担当しました。ベル・データ入社後も継続しているエバンジェリスト活動が米国 IBM にも認められ、2021 年以降 IBM Champion の称号を得ています。

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