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IBMiコラム2023.12.20

IBM i のウンチクを語ろう
~ その90:BI事情とIBM i

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。インテリジェンス(Intelligence)と聞くと、「知性」とか「知能」という訳語を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。BI(Business Intelligence)とはビジネス遂行のための知性とか知能であって、賢い人の仕事の仕方を言っているような印象がありますね。ところが実際はIntelligenceのもう一つの訳語、「情報」をあてるのが妥当なようです。BIの直訳が「ビジネス情報」になるわけですから、大分ありがたみが薄れた印象になってしまいます。でも情報にはもう一つ、お馴染みのインフォメーション(Information)という単語があるはずです。同じ情報なのにIntelligenceとInformationとがある、両者の違いは一体何なのか、というところから今回のコラムを始めてみたいと思います。

そもそもIntelligenceに情報という訳語をあてるのは正しいのか、と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。例えばアメリカのスパイ映画によく登場するCIA、すなわちCentral Intelligence Agencyの名は、皆さん聞かれたことがあるものと思います。これを英和辞典で引くと、「(米)中央情報局」という訳語が出てきます。確かにIntelligenceは情報になっています。では何故Central Information Agencyではないのでしょうか。これは情報の取り扱い方の違いによるものです。

映画の中のCIAは、日常的に入手している敵性国家の情報の中に見落とてしまいそうなごく僅かな異変を察知し、分析官がその中から奇抜極まりない知見を導き出し、時に暴力的で危険な手段を用いて自国の安全保障に活かす、といった活動を行っています。ここでのポイントは得た情報を分析して活用することにあります。一方で、例えば大型商業施設のインフォメーション・センターでは迷子や行きたい店の在処を教えてくれますが、何かの分析結果を教えてくれるわけではありません。ここでの情報は収集・蓄積され、必要に応じて再配布されるのに留まっています。すなわち、知見を得るために分析する情報なのか、蓄積・再配布する情報なのか、という違いがあるわけです。IBM i の中に蓄積されている基幹業務アプリケーションのデータも、保存されているだけであればInformationですが、分析の対象になればIntelligenceになり得ます。

CIA

ビジネス遂行のためには情報を活かすべき、だからBIソリューションが必要になるという議論が目立つようになったのは、おそらく1990年代以降だと思います。それまでの俗に言うKKD、勘と経験と度胸といったミステリアスな属人性に依存するのではなく、データの裏付けをもった科学的な経営判断をするべきだという発想です。この盛り上がりはしばらくすると沈静化し、その後テクノロジーの進化をきっかけに再浮上する、というパターンを繰り返しています。

現在は第三波の盛り上がり、それぞれのBIソリューションが市場に向けたメッセージの中で実際に訴求しているかどうかはともかく、第三世代BIの時期にあるとされています。私はこれまでにBI市場に目を向けたこともあるつもりなのですが、世代分類のことは知りませんでした。どこかのBIの権威による定義ではなく、個々の製品ベンダーの売り文句だからなのでしょうか、インターネット上のサイトによって説明の仕方は様々にばらついています。それでは埒が明かないので、概ねこんなところなのだろうという、安井の独善的解釈を簡単に述べてみましょう。正確性の保証は一切ありませんので、念のため。

第一世代が始まったのは1990年代のようです。極めて高価でライセンス料金が1,000万円超に及ぶことも珍しくありませんでした。基幹業務データがRDBに格納されているままでは分析時のパフォーマンスが出ないので、多次元のキューブ型DBにコピー・変換する必要がありました。そのために直接的操作を行えるのは限られた人達であり、業務部門の方が仮説に基づいて分析を依頼し結果を得るまでに、数日程度待たされることも珍しくありませんでした。ツールの有効性は喧伝されたのですが、高価で使い辛さがあったことから、ある程度のところで市場は沈静化してしまいます。

コストダウン

2010年以降のハードウェア・コストの下落に伴って、大量のデータをメモリに取り込んで処理する事が可能になります。第二世代の象徴である、インメモリ・データベースの登場です。基幹業務データが格納されているRDBをそのままメモリに取り込んでしまえば、パフォーマンスを維持するために、わざわざキューブ型に変換する必要はありません。PCも64ビット化が進み、プロセッサが強化されメモリも大容量化しましたので、業務部門の方が自らツールを操作することも可能になります。とは言え、誰もがBIを利用できる環境を手に入れられるわけではありませんでしたし、急激に増加するデータ量が搭載メモリ容量を超えてしまえば、限界がやって来ます。

普通のアプリケーションのように誰もがBIソリューションを活用する、そんな考え方を後押しするのが、2015年以降に登場する第三世代です。クラウド上にあるサーバーは、オンプレミス機に比べて概ねシステム規模は大きく、BI用にGPUを搭載するなどパワーがあります。そして安井個人的に最も重要だと思う点は、分析のための分析に陥らないこと、業務遂行プロセスの中にBIの考え方を埋め込むことです。

細かな点はさて置き、これら一連の大局的な動きを「データの民主化」と表現するようです。従来はごく一部の限られた人達が活用していたデータを、業務に関わる全ての人達に開放する、というわけです。この方向性は納得感あるものですが、データ活用のための全てのハードルが取り払われたと理解するのは、時期尚早かもしれません。AIを組み合わせるのが最も可能性ある手段だと思うのですが、データサイエンティストがいなくても使えるようになるのがBIソリューションの究極の姿なのだろうと、勝手に妄想しています。実際の業務データと経営上の指標、いわゆるKPIを入力したら、必要な分析を行ってくれるようにならないかな、というわけです。

分析

ここでIBM製のIBM i 用BIソリューションに目を向けてみましょう。かつてのQuery/400にせよ、Db2 Web Query for i (以下Web Query)にせよ、キューブ型DBへの変換を前提としない、IBM i で完結するソリューションでしたが、IT部門の関与は必須でした。Query/400は5250エミュレータを前提に稼働する、BIというよりもむしろレポーティング・ツールと表現する方が妥当なところでしょう。Web QueryはQuery/400の機能を引き継ぎながら、ブラウザをベースにデータ分析機能を追加装備した発展形だと言えます。IBMがツール世代を主張するのは見たことはありませんが、感覚的には1.5世代くらいのところでしょうか。

つい先日Web Queryの一切の営業活動、すなわち新規のライセンス販売もソフトウェア・メンテナンス契約の更新も終了するという発表がIBMからなされた中で、今後を懸念する声も聞かれます。一方で旧来のQuery/400の方は無償化され、オーダーやライセンスキーの入力も不要になっていますが、これに立ち戻るのは機能上のダウングレードになりますので、敢えてお勧めしたいとは考えておりません。ではどうやって次のソリューションを選択すれば良いのでしょうか。費用的な観点も必要ですが、「データの民主化」をキーワードに、すなわちBIツールとしての進化度合いを指標として検討する、というのが私の個人的な提案です。

ベル・データ自身もBIツールのカテゴリに入るソリューションをいくつか取り扱っているのですが、その中で「データの民主化」を最も推進できるのは「Geminiot」(ジェミニオ)ではないかと考えています。第三世代とされているばかりでなく、データ分析においてAIが活かされていることがその主な理由です。この製品名は聞いたことがない、という方も多数いらっしゃるでしょう。Web Queryを置き換えるソリューションについて、詳しくは一度弊社Webページをご覧いただければ幸いです。

ではまた

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社パワーシステム製品企画より、ベル・データ株式会社東日本サービス統括部に転籍。日本アイ・ビー・エム在籍時はエバンジェリストとして、IBM i とパワーシステムの優位性をお客様やビジネス・パートナー様に訴求する活動を行うと共に、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わり合いを論じる講座を担当しました。ベル・データ移籍後は、エバンジェリストとしての活動を継続しながら、同社のビジネス力強化にも取り組んでいます。

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