IBM技術ブログ Vol.2 - Db2 for IBM i (VS Code拡張機能)を今日から使い始めよう 前編 -
はじめに
IBM i の開発をモダナイズする流れの中で、Microsoft Visual Studio Code(以下、VS Code)は新しい選択肢として注目されています。
IBM Power のテクニカル・セールス・チームによる技術ブログ連載第 2 回目として、VS Code開発環境で使う「Db2 for IBM i 」 という拡張機能の利用方法をテーマとします。
「Db2 for IBM i 」は、SQLを活用した開発やデータベース操作をより直感的に行えるようにする重要なツールです。本記事では、その導入方法と活用ポイントを簡潔にご紹介します。

Db2 for IBM i 拡張機能とは
「Db2 for IBM i 」は、IBM i 開発者コミュニティによってオープンソースとして提供されている VS Code 用ツールです。IBM製品ではありませんが、IBM i のモダナイゼーションを支援する目的で開発されています。
このツールは、VS Code 拡張機能「Code for IBM i 」と連携することで、より統合的な開発環境を構築できます。さらに、「Db2 for IBM i 」や「Code for IBM i 」を含む複数の拡張機能をまとめてインストールできる「IBM i Development Pack」を利用することで、RPGやCLなどのソースコード編集と、SQLベースのデータ操作を1つの IDE 上で完結させることが可能になります。
これにより、開発者はツール間の切り替えを最小限に抑え、効率的な開発フローを実現できます。
Db2 for IBM i 拡張機能でできることをまとめます。
- SQL文の作成・実行
VS Code上でSQLを記述し、IBM i に対して直接実行可能。 - SQL実行結果の表示
実行結果がエディタ内に表示され、コピーや保存も可能。 - 構文チェック(Syntax Validation)
SQL文の構文エラーを事前に検出し、実行前に修正できる。 - データベースオブジェクトの参照
スキーマ、テーブル、ビュー、ストアドプロシージャなどをGUIで閲覧。 - クエリ履歴の管理
過去に実行したSQL文を履歴として保持し、再利用が可能。 - SQLジョブの監視
IBM i 上で起動されるSQLジョブの状態を確認できる。 - IBM i Services の活用
QSYS2 系のサービス(例:ジョブ情報、PTF情報など)をSQLで呼び出し可能。 - Visual Explain(実行プランの可視化)
SQL文の実行プランの内部情報を表示し、パフォーマンス分析に活用可能。 - Notebook形式でのSQL実行
複数のSQL文を段階的に実行し、結果を整理して表示できる。学習や検証に便利。 - SELF(SQL Error Logging Facility)との連携
IBM i 側で有効化されたSELF機能により、SQLエラーのログを QSYS2.SQL_ERROR_LOG から確認可能。トラブルシュートに有効。
次の章で導入手順を確認し、実際に様々な機能をトライしてみましょう。
導入手順
拡張機能のインストール
VS Codeを開き、アクティビティーバーにある拡張機能のアイコンをクリックします。
検索バーに「IBM i Development Pack」と入力し、「Db2 for IBM i 」を含む拡張機能パッケージをインストールします。

SSHDを起動させる
VS Code開発を行う際には、IBM i の設定としてSSHDを起動させる必要があります。5250セッションで以下のコマンドを使い、SSHDを起動させます。
>STRTCPSVR *SSHD
※SSHD起動時のJOBまたはユーザープロファイルのCCSIDは5035/1399で実行する必要があります。
VS Code開発をするユーザープロファイルのCCSIDも5035/1399で実施いただくことになるので、このタイミングで該当CCSIDを設定してユーザープロファイルを作成することをお勧めします。
続いて、SSHDの起動確認を行います。
SSHD起動後、QUSRWRKサブシステム内にジョブQP0ZSPWPが開始されるので、このジョブが存在しているかを確認してください。
Code for IBM i にてIBM i へ接続する設定を行う
IBM i の接続情報を作成します。
左アクティビティーバーのIBM i サーバーアイコンを押下し、SERVERS +ボタンを押下してください。

続いてConnection情報に以下を入力し、最下部のConnectボタンを押下してください。
Left align | Right align |
---|---|
Connection Name | Connectionに接続名を入力 |
Host or IP Addless | 接続する区画のIPまたはHost名を入力 |
Port | 接続時使用ポート(22ポートでOK) |
Username | サインオン・ユーザー |
Password | サインオン・ユーザーのパスワード |
秘密鍵を使う場合、パスワードは入力せず、Private keyを選択してください(こちらの拡張機能はOpenSSH、RFC4716、PPK形式に対応しています)。

接続完了後、以下のポップアップが左下に出現します。
SQL JobをStartさせるため、Yesボタンを押下してください。

以上で、セットアップは完了です。
基本機能の紹介
アクティビティーバーに「Db2 for IBM i 」のアイコンが追加されています。
押下しますと、以下の通り「SCHEMA BROWSER」「STATEMENT HISTORY」「SQL JOV MANAGER」「EXAMPLES」のメニューが表示されます。

データベースオブジェクトの参照
データベースオブジェクトを参照するために、SCHEMA BROWSERに確認したいライブラリーやSCHEMAを追加していきます。
Manage Schema Browser Listのアイコンを押下します。

今回はユーザーライブラリー配下のKOINULIBとCRTSCHEMAで作成したKOINUSCを追加します。選択後、OKのボタンを押下します。

SCHEMA BROWSERにKOINULIBとKOINUSCが追加され、TablesでDBファイルだけでなく、SRCPFも確認できるようになりました。
物理ファイルHINMSPの行を押下すると、ファイルのカラム名や属性も確認ができます。

SQL文の実行・実行結果の表示
続いて、View contentsボタンを押下します。

SQL エディタが追加、Select文が生成・自動実行され、レコードの確認ができます。

SQLの実行結果は、エディタ下部に表示されます。結果のコピーもサポートされています。
加えて、カラム名をホバーすると、カラムヘディングも確認可能です。

構文チェック(Syntax Validation)
続いて、SQLを修正し、構文チェックを試していきます。
SQL文を記述中に、カラムを指定する際は候補が出てきます。

構文エラーがある場合はリアルタイムで警告が表示されます。

エラー箇所には赤い波線が付き、マウスオーバーで詳細なメッセージを確認できます。これにより、SQL実行前にミスを防ぐことができ、開発効率が向上します。
それでは、修正をし、Run SQL Statementのアイコンを押下し、SQLを実行します。

クエリ履歴の管理
過去に実行した SQL 文は履歴として保存され、専用のビューから一覧で確認できます。履歴から再実行や、修正して新たに保存することも可能です。

前編は以上となります。
次回は、「Db2 for IBM i 」の便利な機能を深掘りしていきます。
Visual Explain による実行プランの可視化、Notebook形式でのインタラクティブなSQL実行、SELF(SQL Error Logging Facility)との連携など、開発効率と可視性を高める機能を中心にご紹介します。
執筆者紹介
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肥沼 沙織(こいぬま さおり) 日本アイ・ビー・エム株式会社 2015年:ユーザー系企業のIT子会社に入社 2017年:IBM i 保守開発+RPA開発に従事 2023年:日本アイ・ビー・エム入社 Powerテクニカルセールスとして従事 2024年 ~ 2025年:RPG Code Assitant@日本プロジェクト参加、IBM i リスキリングカレッジ運営 Qiita:シュッとシリーズ https://qiita.com/KOINULIB |
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