IBM、年代物のグリーンスクリーン ユーティリティーの廃止に着手
Rational Development Studio(RDS)に組み込まれている、多岐にわたるADTS(Application Development ToolSet: 適用業務開発ツールセット)のサポート終了など、IBM iの次のリリースでもたらされるいくつかの大きな変化に適応できるように、IBMはIBM iコミュニティに心の準備をさせようとしているようです。SEU(Source Entry Utility: 原始ステートメント入力ユーティリティー)とPDM(Programming Development Manager: プログラム開発管理機能)は、サポート終了となるADTSツールのリストに含まれていませんが、それらがIBM iに留まっていられる時間も限られているのではないかという、ミッドレンジ プロフェッショナルの憶測は収まりそうにありません。
5月7日のIBM i 7.4および7.5向けテクノロジー リフレッシュの一部として、IBMは、Merlin 1.0、Rational Developer for i(RDi)バージョン9.6、およびその他の一部の機能の営業活動およびサポートの終了について記した、 「ソフトウェアの営業活動終了およびサポート終了」 のお知らせを発表しました。
「その他」とされている部類には、ILE言語向けRational Development StudioコンパイラーのADTSコンポーネントとともにIBMが提供している数多くのユーティリティーなど、かなり多くのものが含まれているようです。IBMが2025年4月30日にサポートを終了するADTSユーティリティーのリストには、以下のものが含まれています。
- 報告書設計ユーティリティー(RLU: Report Layout Utility)
- 画面設計機能(SDA: Screen Design Aid)
- ファイル比較および組み合わせユーティリティー(FCMU: File Compare and Merge Utility)
- 拡張プリンター機能(APF: Advanced Printer Function)
- 文字作成ユーティリティー(CGU: Character Generator Utility)
- データ・ファイル・ユーティリティー(DFU: Data File Utility)
IBMは、これらのADTSコンポーネントの代替となるいくつかのオプションがあると述べています(たとえば、Rational Developer for i(RDi)、Code for iなど)。
このお知らせに対する反応として、ミッドレンジ コミュニティから様々な懸念が表明されました。廃止されるソフトウェアの代替となる機能はどのようにして入手できるのか、そのソフトウェアはどのくらい期間、利用し続けられるのか、IBMはIBM iの新たなリリースの開発を止めるのかどうか、従来のADTSツールを実質的にIBM i上で使用不能にするようなイベント(バグやセキュリティ脆弱性)にはどのようなものがあるか、などといった懸念です。また、IBMが他のツールのサポートに積極的であることから、今回のサポート終了がどのようなことを意味する可能性があるのかと、憶測をめぐらす人もいました。
ミッドレンジ プロフェッショナルは様々なフォーラムで、SDA(グリーンスクリーン メニューの開発に使用)やDFU(開発者がローカル ファイルと同じようにリモート ファイルを処理できるようにする)などのADTSツールによって実行される特定のタスクを、RDiやCode for iが実際に処理できるのかと疑問を呈しています。
これらのADTSツールとともに失われる機能の中には、IBMや他の独立ソフトウェア ベンダー(ISV)によっても置き換えられない機能もあるのではとIBM iプロフェッショナルは懸念を抱いています。代わりに、開発者は、独自のツールを書くか、または単に作業のやり方を変えることを強いられることになると述べます。それこそが、IBMがこうした措置を行った目的なのかもしれないと疑う向きもあるようです。
IBMがIBM iプラットフォームで提供している、伝説的に有名な後方互換性は、ミッドレンジ コミュニティの中でも、大きな議論のテーマであるとともに、論争の火種にもなっています。
後方互換性の肯定論者は、1970年代から実質的に変わっていないコードを実行できるということは、ビジネス ロジックおよび知的財産に対する投資を保護することにIBMがどれほど熱心に取り組んだかを示していると主張します。おそらく由緒あるSystem Zメインフレームを除けば、そのような保護をビジネスに提供できるプラットフォームは他にはないと論じます。
これに対して、否定論者は、1970年代からのコードを実行できるようにしていることで、IBMは実際には顧客ベースに害を及ぼしているのであり、モダンなツーリングによるコミュニティの進歩を妨げていると主張します。こうした否定論者の一部には、System/36時代に書かれたRPG IIなど、古い言語で書かれたビジネス ロジックを顧客が保守し続けることを可能にしている30年もののツールは、廃止した方がよいと考える人もいます。おそらくより重要なこととして、古いツールを使用していることが、開発者がモダンなDevOps手法を採用するのを妨げていると彼らは述べています。
何年も前にIBMは、System/36およびSystem/38 RPGコンパイラーのサポート終了を匂わせたところ、コミュニティから反発の声が上がったために、前言撤回してサポートを続けることを余儀なくされたことがありました。それ以降は、長期間にわたる後方互換性がほぼ唯一途切れたのは、IBM i 6.1から7.1への大移行のときでしたが、予想されていたほどひどい状況にはなりませんでした。
1年前、IBMのLiam Allan氏は、AS/400の時代から長きにわたってグリーンスクリーン ミッドレンジ開発を支えてきたSEUを、IBM iから取り除いたらどうかという 考えを提案しました 。SEUが古いものであることは疑いようもなく、おそらく新たなプロジェクト向けのエディターとして誰もが選ぶというものではなさそうですが、多くのミッドレンジ プロフェッショナルは、今もなおSEUを使用して古いコードを保守しており、IBMから、RDiまたはVSCodeのようなモダンなツールへの移行を促されても、それを拒み続けています。
結局のところ、IBM iのオープンソース担当ビジネス アーキテクトのJesse Gorzinski氏が実施した非公式のアンケートでは、ミッドレンジ プロフェッショナルの約72%が、SEUを「絶対に」または「なるべく」残すべきと回答しています。一方、IBMはSEUをIBM iから「絶対に」または「なるべく」取り除くべきという回答は29%のみでした。
今なおミッドレンジ ユーザーの80%によって使用されている( Fortra 社の2024年版のIBM i市場調査)、SEUなどのADTSツールに関して、IBMはどのようなプランを描いているのでしょうか。先日、テキサス州フォートワースで開催された COMMON POWERUp 2024カンファレンスでは、SEUの将来がどうなるかについて、多くの噂が飛び交っていましたが、IBMがすでに終了を表明している製品以外は、あまり裏付けのあるものはありませんでした。いずれにしても、IBMは、古いグリーンスクリーン ツールを削減するプロセスに着手しているようであり、実際にどこまで進められるのか注目したいところです。
なお、以下に示す、ADTS以外の数多くのIBM iツールも、2025年4月30日にサポート終了となります。
- ブートストラップ・プロトコル(BOOTP: Bootstrap Protocol)サーバー
- 動的ホスト構成プロトコル(DHCP: Dynamic Host Configuration Protocol)サーバー
- リモート認証ダイヤルイン・ユーザー・サービス(RADIUS: Remote Authentication Dial In User Service)
- ドメイン・ネーム・システム(DNS: Domain Name System)サーバー
- IPペイロード圧縮プロトコル(IPComp: IP Payload Compression protocol)
- Quality of Service(QoS: サービス品質)サーバー
- HTTP Server用のFRCA(Fast Response Cache Accelerator: 高速応答キャッシュ・アクセラレーター)
- パフォーマンス・グラフィックス(Performance Graphics)、パフォーマンス・アドバイザー(Performance Advisor)
- 図形データ表示管理プログラム(GDDM: Graphical Data Display Manager)
- OptiConnect
- IBMマネージメント・セントラル・サーバー(Management Central Server)
- ビジネス・グラフィックス・ユーティリティー(Business Graphics Utility)
- IBM Technology for Java 11 64ビット(5770-JV1製品のオプション19)
- マネージメント・セントラル(Management Central)
IBMが、これらのサポート終了製品の代替となる製品を提供しているケースもありますが、代替製品がないケースもあります。その場合、IBMは、オープンソース オファリングまたはISV製の製品の使用を推奨しています。IBMによる、ソフトウェアの営業活動およびサポート終了についての発表レターは、 こちらでご覧になれます。また、 IBMのソフトウェア プランニング ガイダンスでも、同様の情報を参照できます。