クラウドへ移行できるものは移行し、できないものは移行しない
クラウドというのは、データセンターにおける技術変遷のひとつと言うよりも、ディストリビューションモデルのひとつと言えます。そして、2006年3月にAmazon Web Servicesが開始されるよりも前から、私たちの多くはタイムシェアリング ユーティリティ コンピューティング モデルに戻ることを考えていました。それは、エンタープライズITショップが、数十年間にわたるベストオブブリードのコンピューティングとシステム統合に取り組み、アウトソーシングの波にも乗った後では当然のことでした。現状のままITショップを運用するためにIBMにお金を支払うことができるのなら、誰かにお金を支払ってもっと良いものを開発してもらい、それを利用すればよいのにと思います。
このクラウドというもの(その名前は世界最悪です。なぜなら、明確に実体のあるハイパースケール クラスのデータセンターは雲のような存在とは無縁だからです。私たちはそれらのうちかなりのサイトを訪れています)は、私たちがこれまで耳にしたようなばかげたものでは決してありませんでした。しかし、人は時には誇張し過ぎることがあるものです。AWSの前CEOで、現在はAmazon親会社のCEOであるAndy Jassy氏が好んで言っていた、「機が熟したら」すべてがクラウドに移行する、という考えは大きな間違いだったのです。
機が熟したら、ボットは賢くなったAIの後を引き継ぎ、ありとあらゆるデータで輝く巨大なダイヤモンド結晶の宇宙船に乗り込んで地球を旅立って、銀河系の中心へ向かいます。そして、地球ではすべてのコンピューターが破壊されますが、コンピューターは少なくとも私たち人類は破壊しません。そして、私たちは、文字のない口頭伝承の農耕生活に戻り、今後数千年間を掛けて、これをすべてもう1度学び直すのです。
話が逸れました。
ところで、オンプレミス コンピューティングからクラウドへの、避けることも止めることもできない移行に関するさらにもうひとつのレポート(Gartner社のこのレポート)は、なかなか楽しく読ませてもらいました。そして、そうした移行に対する慣性抵抗と私たちが解釈しているもの、それは今日に至るまで続いています。以下の図では、Gartner社が予測している2025年の企業IT支出額を、コロナウイルス パンデミックが襲う前の2019年の過去データと見比べることかできます。
2022年の支出額は約1兆3,000億ドルの予想で、2025年には1兆8,000億ドルに届くとGartner社は予測しています。従来型のオンプレミスのIT支出の増加率は、2020年に急増した後は、ご覧の通り、横ばいで、毎年、30%を多少上回る辺りです。しかし、クラウド インフラストラクチャー、サービス、およびソフトウェアの支出の増加率は加速度的に伸びており、2025年には、クラウド部分はオンプレミス部分を上回るようです。ちなみに、このデータには、アプリケーション ソフトウェア、インフラストラクチャー ソフトウェア、ビジネス プロセス サービス、およびシステム インフラストラクチャーといった、クラウドへの移行が可能なものに対する支出が含まれています。通信サービスおよびクライアント デバイスの接続性、またはクライアント デバイス本体など、クラウドへ移行できないその他のITサービスおよび製品は含まれていません。
IT支出において、クラウドが単なる多数派ではなく、支配的な勢力になる頃までには、私たちは皆引退しているでしょう。しかし、完全にそうなるわけではないというのも、ちょっとあり得そうなことです。いずれ分かることです。