世界的なCOBOLコードの増加によって「レガシー」資産の再評価が促進される
COBOLというのは終わった言語であり、(ほとんどは)IBMメインフレームに縛られたままだと思われているようです。そして、IBMメインフレームもまた、終わったと見られているようです。しかし、最近のMicro Focus社の調査によれば、世界全体でのCOBOLコードの総数は、実際のところ増加しているそうです。COBOLに何が起こっているのでしょうか。
Micro Focus 社は、世界でのCOBOL利用の現状の評価を、調査会社の Vanson Bourne 社に委託していましたが、その調査結果が2月4日にリリースされました。おそらく、1番、目を見張った数字は、レポートのタイトル、「How much COBOL is really out there?(COBOLは実際どれくらい使用されているのか)」に対する答えの数字だったのではないでしょうか。
答えはこうです。COBOLコードの総数は7,750億~8,500億行だということです。Micro Focus社によれば、これは、約2,000億~3,000億行とされていた以前の予測をはるかに上回る数だそうです。
「8,000億行というコードの行数は、中核となるビジネス システム技術の中で最も信頼できるものへの投資を続けることの重要性を裏付けるものです」と、Micro Focus社のCOBOLプロダクト マーケティング担当ディレクターのEd Airey氏はプレス リリースで述べています。
メインフレーム アプリケーションが退役するのにつれて、COBOLコードの行数は減少して行くというのが市場の一般的な認識ですが、これはVanson Bourne社が見抜いた現実とは一致しないようです。この調査会社によれば、調査回答者の48%が、COBOLコードの数量は今後12か月間で増加すると予想しているということです。
さらに、52%は、COBOLアプリケーションが、今後少なくとも10年は、彼らの組織で稼働していると予想すると回答しています。一方、80%以上は、彼らが引退する時点でもCOBOLは彼らのショップで使用されていると回答しています。
COBOL利用の変化は、いくつかの要因によって導かれています。要因として最も多いのが「顧客要件」(44%)で、これに、41%で「将来のIT戦略」、35%で「アプリケーション ポートフォリオと新技術との整合性」が続きます。
Vanson Bourne社の調査の回答者の90%以上が、COBOLアプリケーションは組織にとって戦略的に重要だと考えているようです。しかし、このことは、これらのシステムが年数を重ねていて、ニーズを満たさなくなっているため、組織はそれらのシステムを廃棄したくてたまらないという通説とはいくぶん矛盾するものがあります。
既存のCOBOLコードのモダナイゼーション(「総入れ替え」ではなく)は、調査回答者の64%にとって望ましいことであるようです。一方、72%は、モダナイゼーションが合理的なビジネス戦略であると回答しています。
COBOLの行数の8,000億行という数字は、もちろん推計値です。そのため、Vanson Bourne社は、COBOLコードがショップ内にどれくらいあるかという質問に関して、調査回答者に、その回答の信頼度も併せて答えてもらいました。
その分析の結果は、自分の推計値に非常に自信ありが40%、多少自信ありは46%でした。自分の推計値に多少懐疑的だった回答者も、自分たちの回答が(あえて言えば)10%以内の誤差だったと思っていることを示しています。
Vanson Bourne社は、回答を取りまとめ、相対的な確実性のレベルに照らして、回答に重み付けを行いました(調査回答者数は明らかにされていませんが、49か国から集められ、従業員1,000人以上の大型のショップに勤務の人が多めだということです)。次いで、最もポピュラーなCOBOLプラットフォームに対する各インストール ベースの市場規模の推計値を使用してCOBOLコードの推定量の算出を行いました。
企業がどのプラットフォームでCOBOLを稼働しているかは、このレポートのもうひとつの興味深い数字です。メインフレームがCOBOLの世界で大きな部分を占めていることはまったく驚きではありません。Vanson Bourne社のデータは、COBOLコードの43%はz/OS上で稼働していることを示しています。2番目のプラットフォームは何でしょうか。驚くべきことに、2番目は Microsoft Windowsで、31%を占めています。
COBOLユーザー数グラフのロングテールの数値はそこからガクンと小さくなります。IBM z/VSE-VMおよびIBMのz Cloudが3番目および4番目を占め、これに、 Intel上のRed Hat、Microsoft Azure、 AWSといった、非メインフレーム環境が続きます。そしてIBM i が5%を占めて8番目です。
では、このことは、IBM i とどのような関連があるのでしょうか。まず、パンデミックの1つの副作用は、それによってIT部門が再編成されたことであるように思われます。特に、政府機関、小売業、および製造業など、需要が著しく増加した業界においてそう言えそうです。中核となる基盤的なビジネス システムに過度の負担が掛かったことで、組織はモダナイゼーションのスケジュールを前倒ししています。
アーキテクチャーが似ていることから、IBM Zおよびメインフレーム システム上でCOBOLを稼働している多くの組織は、次善の稼働場所としてIBM i サーバーに目を向けることがよくあります。「COBOLは、iSeries上で、メインフレーム上でと同じようにサポートされています」と、COBOLのIBM i へのマイグレーションを専門としている Cothern Computer Systems社のマイグレーション サービス担当バイスプレジデント、Jerry Thomas氏は述べています。
メインフレームのショップがCOBOLアプリケーションの引っ越し先を見つけようとするとき、IBM i は、それらの一部を継承する候補となります(少なくとも一時的に)。先日、 Eradani 社CEOのDan Magid氏は、IBM i 上でのCOBOLアクティビティへの関心が復活しつつあることについて言及しています。これは、 HelpSystems社が収集した 市場調査データからも、ある程度は裏付けられる ように思われます。
Cothern社のビジネス開発担当バイスプレジデント、Walter Camp氏によると、COBOLアプリケーションを移行させようと考えている多くのメインフレームの顧客は、次にどうするかを決めるまでの数年間、それらのアプリケーションをIBM i へ移動しておこうとします。そうすることで、モダナイゼーション、全面的なリライト、自家製システムからパッケージERPシステムへの移行のうち、どれが一番合理的か判断する時間稼ぎになります。
「これらのCOBOLプログラムの1つを変換する場合、約1年を要します」とCamp氏は述べます。「リライトする場合は、同じアプリケーションを開発し、稼働させるのに3~4年掛かることもあります。時間とコストが必要になるからです。あるいは、言語を変更したい場合は、言語を変更するツーリングが必要になります。
「つまり、こうした乗数があるわけです」と彼は付け加えます。「そして、コストと時間はイコールです。100万ドルのプロジェクトのつもりが、結局、200万ドルということになってしまいます。言語を変更できる場合は、すべてをロードする前に、400万ドルにまで膨らんでしまうこともあります。それは、何を行いたいか、の関数ということです。ビジネス目標は何か。これにいくら投資できるか。時間はどれくらいあるか。そして、ほとんどの企業は、新たなコードを開発するのに4年掛けることはできません。正直なところ、パッケージを購入するだけの方がましなのです。」
市場で最も広く使われているCOBOLコンパイラーおよびツールのいくつかの開発を手掛けているMicro Focus社の開発者は、これらの年数を重ねたCOBOLアプリケーションには多くの価値がまだ集積しているのをはっきり目にしています。Vanson Borne社の調査によれば、COBOLユーザーの70%が、リライトや廃用ではなく、COBOLアプリケーションのモダナイズを選んでいます。
そのことは、COBOLのアプリケーションが今後少なくとも10年間は、有利な立場にいられるということを意味すると、Micro Focus社のアプリケーション モダナイゼーションおよびコネクティビティ担当シニア バイスプレジデントのChris Livesey氏は述べています。
「COBOLがデリバリーされる場所や方法が変わり、そしてその使用量が増加し続けるなか、COBOLモダナイゼーションに関する考え方を見てみると、その強力なデジタル テクノロジーとしての信頼性は、あと10年間は揺るがないように思われます」とLivesey氏はプレス リリースで述べています。「ミッションクリティカルなアプリケーションおよびビジネス システムを60年間にわたってサポートしてきたCOBOLは、柔軟性も弾力性もあるコンピューター言語として進化を続け、世界中の企業にとってこれからも適切かつ重要な言語であり続けるでしょう。」