OpenShiftによって示されるIBM i モダナイゼーションへの道
IBMが340億ドルでRed Hat社を買収した際のクラウン ジュエル(魅力的な重要資産)は、OpenShiftであったことに間違いないでしょう。OpenShiftは、「クラウド ネイティブ」アプリケーションを稼働するための、Kubernetesをベースとするコンテナ管理システムです。OpenShiftがIBM i およびそのアプリケーションと直接統合されることはなさそうですが、IBMでは、このソフトウェアが、IBM i 顧客の間でアプリケーション モダナイゼーションおよびイノベーションの新しい波を起こしてくれることに強い期待を寄せているようです。
IBM PowerエンジニアのJoe Cropper氏は、2週間前に開催された COMMON主催の「IBM i Futures」カンファレンスで、IBM i のショップによるOpenShiftの導入ケースについて詳しい説明を行いました。昨秋のバーチャルPOWERUpイベントのセッションでは、Cropper氏はPowerショップに OpenShiftに目を向ける よう促すプレゼンテーションを行っています。今回の「 IBM i Wears a Red Hat Volume 2(IBM i が赤い帽子を被る 第2部)」と題する新たなセッションで、Cropper氏はさらにもう一歩踏み出しました。
45分間のセッションでCropper氏が取り上げた内容は多岐にわたりました。IBM Master Inventorの称号を持つCropper氏は、エンタープライズおよびオープンソース テクノロジーに精通していることは明らかで、そうしたテクノロジーがどのように組み合わさるかについて、深いレベルの知見を披露しています。これは簡単に行えることでありません。コンテナやKubernetesといったものは、ほとんどのIBM i プロフェッショナルにとっては馴染みが薄いと言ってよさそうです。RPGおよびDb2 for iデータベース呼び出しが、「主流」のITプロフェッショナルにとって馴染みが薄いというのと同じです。今後の展望についてCropper氏が述べていることが正しいとしたら、そうした馴染みのギャップがずっと存在し続けることはなさそうです。
Cropper氏が解説したケースの要点は、クラウドであれ、オンプレミスであれ、両者の組み合わせであれ、OpenShiftは、新しく刺激的なアプリケーションの多くが稼働するバーチャルな基盤となるということであり、さらに言えば、OpenShiftをPowerプラットフォームや周囲のエコシステムに深く統合しようとIBMが行っている取り組みのおかげで、IBM i のショップはこうした次世代アプリケーションを活用するのに有利な位置につけているということです。
「Power SystemsはSoR(記録のためのシステム)であり、IBM i 区画には、言うなれば、組織のクラウン ジュエルがあるということになります。驚異的な量のデータがあるからです」とCropper氏は述べます。考え方としては「これらの新たなアプリケーションで、そうしたデータを囲い込む」ということです。
「IBM i プラットフォーム上に存在しているデータへの、新たなデジタルまたはモバイル フロントエンドの構築に目を向けている方もいるかもしれません」と彼は続けます。「あるいは、新たなタイプのアナリティクスの活用に目を向けている方もいるかもしれません。そのため、そうした技術はすべてOpenShift上にデプロイされてから、IBM i 区画のそれらのデータベース上のデータにシームレスに接続することができるようになります。」
これらの次世代アプリケーションは、Node.jsまたはGolangなどの言語で開発されており、ランタイムとしてKubernetesをターゲットにしています。それによって、基盤となるサーバーへの依存度は激減し、アプリケーションの拡張性だけでなく移植性ももたらされるからです。「新たなクラウド ネイティブ アプリケーションでは、コンテナに目が向けられがちですが、これらがRed Hat OpenShift上で稼働するのを目にすることになります」とCropper氏は述べます。
これらの次世代アプリケーションは、Node.jsまたはGolangなどの言語で開発されており、ランタイムとしてKubernetesをターゲットにしています。それによって、基盤となるサーバーへの依存度は激減し、アプリケーションの拡張性だけでなく移植性ももたらされるからです。「新たなクラウド ネイティブ アプリケーションでは、コンテナに目が向けられがちですが、これらがRed Hat OpenShift上で稼働するのを目にすることになります」とCropper氏は述べます。
これらのクラウド ネイティブ アプリケーションは、APIを使用して既存のIBM i アプリケーションやデータベースと統合することができます。けれども、さらに重要なのは、OpenShiftがPowerプラットフォームでサポートされているため、それらの新たなアプリケーションは、IBM i (またはAIX、Linux)ビジネス アプリケーションのすぐ隣に並んで稼働することも可能だということです。
「これを行うことには非常に大きなメリットがあります」とCropper氏は述べています。「レイテンシーまたはデータのグラビティが小さくなります。通信はすべてメモリー内で行われ、物理ネットワークへ出て行く必要さえありません。すべてがVirtual I/O Server(VIOS)を通じて行われるため、帯域幅が極めて広い、低レイテンシーの通信が実現されます。」
IBM i アプリケーションまたはDb2 for iデータベースに対しては、まったく修正を加える必要はないとCropper氏は述べます。データベースやアプリケーションは、現状のままでよいということです。だとすると、「アプリケーション モダナイゼーション」の伝統的な定義からは外れるのかもしれません。けれども、実際、クラウド ネイティブ アプリケーションで開発されているデジタル機能を活用する方法が提供されるのです。
「結局のところは、そうした次世代のアプリケーション セットの構築の支援であり、オープンソース エコシステムが毎日毎日構築しているこうした大量のコンテナを活用するということです」とCropper氏は述べます。「これによって利用が可能になる膨大な量のテクノロジーがあるのです。」
OpenShiftの他にも、こうした新たなハイブリッド クラウドに組み込まれるインフラストラクチャー コンポーネントがいくつかあります。Cropper氏は、IBM Cloud Pak for Multicloud Management、WebSphere Hybrid Edition(旧Cloud Pak for Applications)、およびAnsibleを挙げています。
「これらはすべて、Power Systemsプラットフォーム上で稼働できるようになっています。IBM認定でもあり、Red Hat認定でもあり、エンタープライズ グレードでもあるということです。どれも、ミッション クリティカルなビジネスを行うのに必要なことばかりです」と彼は述べます。「チップから最上位層に至るまで、すべてのアプリケーションとその間のすべてのものを含む、まさに豊富で堅牢なスタックが揃っています。」
まさに2つの世界、すなわち、IBM i アプリケーション(ある程度はAIXアプリケーション)の伝統的世界と、あるバージョンのLinux上で稼働するKubernetes上で稼働するクラウド ネイティブ アプリケーションの新しい世界との融合です。Linuxは、オペレーティング システムの観点からすると、新たなITパラダイムにおける大勝利者ですが、だからといって、IBM i やAIXやz/OSに取って代わるわけではありません。
肝心なのは、うまく機能している古いものを使用し続けながら、新しいものを使用して古いものをさらによく機能させることです。また、伝統あるプラットフォームを最新の状態にアップデートしておくことで、そうしたプラットフォーム上に残っているすべてのデータやビジネス ロジックを活用するアプリケーションの開発を、最新のスキルを知る若い開発者が行える環境を確保しておくことも大事です(もっとも、このプラットフォームが終焉を迎える日までは、5250コマンド ライン周りに明るい管理者やオペレーターは常に求められるでしょうが)。
「IBM i を使用しているユーザーの多くは、そのプラットフォームの能力についてよく知っています」とCropper氏は述べます。「現在、行おうとしているのは、そうした能力と、この記事の中でOpenShiftとともに取り上げてきたこうした新たなクラウド ネイティブ技術とを融合させ、実際に、そうした能力を、コンテナなどの新しい世界にある、こうしたまったく別の機能につないで、これら両方の世界の橋渡しをして、同じプラットフォームでこれらのアプリケーションを稼働できるようにすることです。そのため、よく知っている、大好きな、何年も使用してきたプラットフォームの、実績のある、信頼性の高いセキュリティ機能を利用できることになるわけです。こうした新たなクラウド ネイティブの時代にも、このプラットフォームからそうした恩恵を受け続けることができるのです。」