IBM i インストール ベースの現状、パート2
IBM i インストール ベースの分析を行った前半の記事では、2020年版「 IBM i Marketplace Survey 」レポートの調査参加者が昨年秋に回答したマシン台数および論理区画数について検討を行いました。この点について計算や分析をあれこれ行って分かったのは、多数のマシンおよび多数の区画を使用している大きな顧客群があり、そうした顧客は、巨大なNUMAサーバーを使用している顧客とまったく同じくらいIBMにとって重要なのだということでした。
IBM i ベースの現状をテーマにした記事シリーズの後半では、本題に入って、少なくとも2019年末に行われた調査の時点で、IBMミッドレンジ ショップで使用されているハードウェアおよびオペレーティング システムの世代について見てみようと思います。20年近くにわたって小誌『 IT Jungle』の編集長を務めた、今は亡きDan Burgerの尽力によるところもあり(小誌でも調査への参加を呼び掛けました)、IBM i システム ソフトウェア プロバイダーのHelpSystems社は、過去6年間にわたって、IBM i市場に関する調査を実施してきました。
1月中旬、6回目となる年次「 IBM i Marketplace Survey 」レポートがHelpSystems社から公開されました。回答者500人以上の調査に基づくレポートであり、回答者数はなかなかの数と言えます。ここ数年間と同様、私はHelpSystemsとIBMの担当者とともに、調査結果について検討を行うウェブキャストに参加しました。先週の木曜日に行われたこのウェビナーのホスト役を務めたのは、HelpSystems社の技術ソリューション担当エグゼクティブ バイスプレジデント、Tom Huntington氏で、ご一緒したのは、IBM i プロダクト オファリング マネージャーのAlison Butterill氏、その前任者で現在はIBM Lab Services部門エグゼクティブのIan Jarman氏、およびワールドワイドIBM i プロダクト マーケティング マネージャーのBrandon Pederson氏でした。調査レポートは、 こちらのリンクからダウンロードすることができます。また、ウェブキャストを視聴することもできます。このレポート結果の分析については、一連の記事を通じて行っています。 2020年に顧客がPower SystemsハードウェアおよびIBM i ソフトウェアをアップグレードするべく描いているプラン についてはすでに取り上げましたし、もちろん、先週はシステムおよび区画の分析について取り上げたところです。今週は、前世代のハードウェアおよびソフトウェア技術と比べて、Power9やIBM i 7.3および7.4がどのような伸び方を示したかについて見てみようと思います。
まずは、調査レポートから、プロセッサー世代別のハードウェアの分布について見てみましょう。
調査結果について検討を行ったウェビナーで、私は、Power8ハードウェアの際の動向を考えると、Power9の伸びはもう少し力強いと思っていたと述べました。しかし、それは間違いでした。理由を説明します。
IBM i を稼働できるエントリーPower9マシンの 出荷開始は2018年2月 であり、IBM i をサポートするハイエンド マシンに Power9が搭載されたのは2018年8月であったため、2019年版レポートに向けて調査が行われた2018年末には、顧客はPower9ハードウェアをある程度所有していただろうと予想されていました。実際、回答者の14%はPower9ハードウェアを所有していると回答しており、2020年版レポートに向けた昨年末の時点では、そのシェアは31%に増えています。エントリーPower8マシンの 登場は2014年4月で、Power8ベースのハイエンド マシンの 発表は2014年10月だったため、「 IBM i Marketplace 2015 」レポートにはPower8が登場するだろうと予想していました。結果はそうなりました。しかし、2015年版レポートでPower8ハードウェアを所有していると回答していた顧客は8%のみでしたが、2016年には22%に増加しています。さて、公正な比較のために言っておくと、市場に出てからの期間は、Power9マシンの方が3か月長かったため、これが伸びに寄与した面はありますが、このデータを基にすれば、Power9の1年目の最初の伸びは、Power8の最初の伸びに比べて1.75倍、2年目の伸びは1.4倍と、急激なものでした。
Power8は、60%近くの顧客が1台以上のPower8マシンを所有していると回答するに至るまでに、長い時間が掛かりました。過去の2年の調査(実際は2017年と2018年のデータ)では横ばいになっています。これは、2010年4月リリースのPower7および2012年7月リリースのPower7+が、市場における製品寿命が長かったことを反映しており、グラフから見て取れるように、Power7およびPower7+はようやく減少し始めたところです。こうした古いシステムがインストールされていると回答した顧客は38%でした。
ところで、顧客は1台のマシンのみまたは1つのハードウェア レベルのみをインストールしている、という前提になっているわけではないことについては、誰も指摘しようとしていないようです。データからは、顧客は複数のハードウェアを混在させていることが見て取れます。各年のパーセンテージを合計してみると、調査を行った6年間を通じて、常に140%近辺の狭い範囲に収まるからです。5~6年の間にデータセンターでハードウェアが入れ替わりながらも、多様性はしっかり保たれているようです。
また、2004年~2009年に登場したPower5、Power5+、Power6、およびPower6+プロセッサーを使用しているマシンが、2020年を迎えた今もなお使用されていることについても、ここで触れておこうと思います。これらのマシンは、今もなお、合わせて顧客の15%で使用されているようです。
このデータからは見て取れないことの1つは、言うまでもなく、Powerチップごとのマシンの分布です。調査回答者が答えているのは、 何を所有しているかのみであって、 何台所有しているかではありません。したがって、たとえば、Power5マシンを1台所有しているショップでも、マシンを50台所有しているショップでも同じ回答となり、どちらも、Power5マシンを所有している 顧客 が1とカウントされてしまいます。2020年版レポートに向けた調査に回答した、各企業の代表である500人強の間での プロセッサー の分布を取り上げて、顧客当たりのマシン台数を基にして、私たちが調査に登場していたと考える2,285台(先週の記事で算出した台数)のマシンに当てはめることなどできません。このデータからは、これ以上精度の細かい計算をすることはできないため、マシンの詳細情報や企業全体のマシン構成について顧客ごとに聞き出さない限り、プロセッサーの分布を知る術はありません。 それでも、このデータは、Power9にとって良い1年であったことを示す良い指標であり、また、 Power Systems事業全般が低迷気味であることをよそに、IBM i 部門はまだアップグレード サイクルの半ばを過ぎたところだということも示しています。したがって、たとえ、2020年に見込まれる「アップグレード」の中身が、新たなシステムやPower9チップへの切り替えではなく、Power8ハードウェアへの移行や、既存のPower7、Power7+、Power8マシンの未使用機能のアクティベーション、あるいは、たとえばプロセッシング カードの交換であったとしても、ここには楽観できる理由があるのかもしれません。 3週間前に指摘したように、HelpSystems社によって実施された2020年版レポートに向けた調査における、IBM i のショップのアップグレード プランについてどう解釈するかは、質問に回答した顧客にとって「アップグレード」という言葉が何を意味するかによって大きく左右されます。目にすることができるすべてのデータからすると、2020年にPower Systems事業のIBM i 部門が、2019年と同じように好業績を挙げるとしても、驚くには当たりません。もっとも、2018年ほどには、おそらくならないでしょうが。けれども、IBMがこの事業についてほとんどデータを公開していないことから、確かなことは言えません。
確実に言えることは、IBMから提供されるテクノロジー・リフレッシュのおかげで、新リリースのたびに移行の必要が生じることなく、簡単にハードウェアを最新に保ち、最新技術について行けるようになっているということです。 1年ほど前にIBMから聞いた話によれば、多くの顧客はリリースを1つおきにスキップしていて、新たな機能やハードウェア サポートは、利用可能になったテクノロジー・リフレッシュを通じて入手しているということのようです。 それでは、ここからは、オペレーティング システムについて見てみましょう。次の図は、「 2020 IBM i Marketplace Survey 」レポートからの引用です。
このオペレーティング システムの分布でも、質問の尋ね方について注意が必要です。尋ねていたのは、顧客が使用している 主要なオペレーティング システムのレベル であり、顧客が使用している すべてのオペレーティング システム リリース ではありません。これらはまったく異なる質問であり、回答者によって答え方に違いが出たのではないかと思います。実際、HelpSystems社によって公表された過去の調査レポートすべてに目を通してみたところ、まさに今まで、私自身、質問をはっきり聞いていなかったようでした。私はその質問を前者ではなく後者の意味で捉えていました(そもそも、人間がコミュニケーションすること自体が驚くべきことであり、自分が考えているほど正確に相手に伝わっているか時々疑問になります)。
まず見て取れるのは、2020年のレポートでは、i5/OS 5.4以前のリリースが、回答の如何に関わらずグラフから除外され、また、6.1以前のリリースは減少しているということです。不思議なことに、こうした以前のリリースの使用は、2015年から2016年にかけて1.6X倍に増加し、2017年には減少し、その後2回の2018年および2019年のレポートでは横ばいで、2020年にはほぼ半減となっています。
一部の顧客によるリリースのスキップの影響がデータから見て取れると思います。IBM i 7.1は、滑らかな釣鐘形の曲線を描いていますが、IBM i 7.2は当初から変動が激しく、数はまだ多いものの減少気味で、IBM i 7.3はきれいな右肩上がりの滑らかな曲線です。IBM i 7.4はまだ動き出したばかりであり、IBMがDb2 Mirrorクラスタリングの価格をローエンド マシン向けにしなければ、今後数年間、主要なオペレーティング システムとしての分布は、IBM i 7.2に似たようなものになるかもしれません。見てのお楽しみです。
一番知りたいのは、マシンおよび論理区画にわたってのオペレーティング システムの分布です。私たちが知る限り、PowerVMでは、どのリリース レベルでも、マシンが3つ以上の異なるIBM i リリース レベルを稼働することはできません。しかし、そうだとしても、オペレーティング システムの組み合わせは、上の図から見て取れるよりはるかに豊富かもしれません。そして、私はつい指摘したくなってしまうのですが、調査回答者は、顧客ベースの中でも最もアクティブな顧客であり、ハードウェアおよびソフトウェアの最新情報に敏感である(そして『 The Four Hundred』の読者でもある)可能性が高いと思われます。そう考えると、このデータセット全体が、示されている以外のことを表していることはなさそうです。すなわち、IBM i のショップで使用されている 主要なオペレーティング システムのレベル であって、使用されている オペレーティング システム レベル全体の分布 ではないということです。それらは、まったく同じであることもあり得ますし、まったく違うこともあり得ます。この質問の尋ね方からは分かりません。グラフのパーセンテージを合計すると、毎年必ず100%になるため、回答者は、その質問の尋ね方に合うように回答していたことがうかがわれます。ただし、もっと有益であると思われる答え方ではありません。
そして、この点にこれまで目を留めてこなかったことについては、私も含めて反省する必要がありそうです。
18か月~24か月おきに新リリースがあり、新たなPowerプロセッサーおよびハードウェアは36か月~42か月おきであることと、新たなリリースを古いハードウェアで何年も何年も稼働できることを考えると、オペレーティング システム全体の分布は、主要なオペレーティング システムのデータより分散していると思われます。テクノロジー・リフレッシュは、リリースをスキップすることも可能にしますが、このことは、そうしたオペレーティング システムの多様性を損なうことにもなるため、どのような力がこのインストール ベースにより大きく影響を与えるのかは判断しづらいものがあります。
概して言えば、IBMがIBM i に関して取り組んでいることは、かなりうまく機能しており、多くのショップがV5R3、V5R4、6.1に張り付いている現状が打破されることになるのは間違いないでしょう。