IBM i の精鋭が集まるIBM Lab Services
リリースされたばかりの最先端の技術を、まったく初めてのIBM i サーバーに導入することは大変なことになることもあります。たとえば、Db2 Mirrorです。Db2 Mirrorは2か月前にIBMからリリースされたばかりで、本番設定で導入した経験を豊富に有する人はまだいないでしょう。IBMにLab Servicesの創設を促したのは、まさにそのようなプロジェクトだったのです。
Lab Servicesは、最も新しい技術または最も複雑な技術を導入するために召集される IBM のコンサルタントの精鋭チームです。Lab Servicesのコンサルタントは、ハイ アベイラビリティーに加え、数あるプロジェクトの中でも特に、クラウドおよびハイブリッド クラウド、データベース モダナイゼーション、AIに関連するプロジェクトに取り組んでいます。
数十年前にIBMは、IBM i やその前身システムの故郷であるミネソタ州ロチェスターにあるIBMラボでLab Servicesを創設しました。Lab Servicesのクライアントのかなりの部分を占めているのは今でもIBM i サーバーですが、AIX/Linux on Power、System zメインフレーム、およびDS8000のようなエンタープライズ ストレージ システムなど、他のIBM製品のユーザーへの対応も踏まえて組織の拡充が図られてきました。
IBM Lab Servicesチームは現在、IBM i 7.4とともに 6月下旬にリリースされた Db2 Mirrorに関する専門知識に対するニーズに応えるべく強化を図っています。このデータベース クラスタリング技術は、継続的な可用性や、アプリケーション サーバーの誤動作に対する耐性を実現する方法をIBM i のショップに提供するために開発されたものです。
IBM Lab Services内のPower Systemsチームのビジネス ユニット エグゼクティブであるIan Jarman氏によると、Db2 Mirrorは、IBM i 環境でレジリエンシーを構築するための新たな技術であるとともに新たなアプローチでもあるため、Lab Servicesにとってうってつけの業務分野になるということです。
「Db2 Mirrorについて言えば、まだまったく初期の段階と言えます」とJarman氏は『IT Jungle』に述べます。「現在、私たちは、この技術の導入を検討しようとする最初のクライアントに取り組んでいます。」
Db2 Mirrorのリリースは、約10年前にPowerHAがIBM i の現場に登場したときに起こったことに対応することを期待されてのことでした。PowerHA製品は、実のところ、Lab Servicesの業務が起源となっていると言えます。IBM i のショップはIBMと契約を結んで、High Availability Solutions Manger(HASM)の下にUnix向けのストレージ ベースのレジリエンシー技術をIBM i の領域に取り込んでいました(IBMがPowerHAの名前で発表したのは2009年のことです)。
そのような開発と導入が交わる場所にいるということは、Lab Servicesの顧客になるメリットの1つです。「そのような技術ではLab Servicesにあるツールを使用して取り組みましたが、その後、そうした取り組みは製品の開発に組み込まれました」とJarman氏は述べます。「PowerHAは、Lab Servicesと開発チームとの連携を示す格好の例です。」
製品が成熟するにつれて、Lab Servicesのコンサルタントのニーズは少なくなります。製品を実装および利用するのに必要となるスキルは、それらの製品が日常作業で幅広く使用されるようになるにつれて、市場でありふれたものになるからです。製品がさらに定着して行けば、IBM i のショップは、必要とされるコンサルティングの専門知識を提供可能な地域のビジネス パートナーを見つけやすくなります。あるいは、顧客は気付いたら社内の従業員が自在にソフトウェアを活用できるようになっていたということもあるかもしれません。
「製品が新しければ新しいほど、直接、開発チームと連携して作業することが多くなります」とJarman氏は述べます。「たとえば、Db2 Mirror、AI、または最新のOpenShiftテクノロジーといった分野では、それらのテクノロジーのロール アウトに際して、直接、ラボとの協働を行っています。」
この他にもIBM内には、他のプロジェクトへの対応に当たってよりふさわしい立場にあるコンサルタントがいます。たとえば、ビジネス トランスフォーメーションやアプリケーション モダナイゼーションについて支援が必要であれば、IBM Global Servicesに相談すればよいでしょうし、IT機器の日常的な管理を外注化したければ、IBM Global Technology Servicesが頼りになるといった具合です。また、新たなIBM i 機器を誰かに「ラック アンド スタック(設置や初期設定)」してもらう必要があるのであれば、IBMビジネス パートナーが一番かもしれません。
「そうしたことは、Lab Servicesが行う業務領域でありません」とJarman氏は述べます。「IBM内の他のサービス部門と異なり、アウトソーシングは行いません。また、クライアントとの長期的なプロジェクトは行いません。Lab Servicesの業務は、クライアントがテクノロジーを導入するのを支援することであり、スキルやベスト プラクティスをシェアすること通じて、クライアントが新しい環境で自立できるよう支援することです。」
より高いレベルを求めようとしないIBM i のショップも数多くあります。彼らは、長年そうしてきたように、現在使用しているボックスで行っていることを続けるだけで満足しているというわけです。けれども、そのボックスからより多くのものを得ようとしている企業もあります。最新技術を使用してビジネスを成長させ、コストを削減し、または効率を向上させようとしている企業です。このような企業こそが、Lab Servicesの専門知識を求めるタイプの企業だと言えます。
たとえば、現行のPower Systemsボックスのコアおよびソケットの最大数を越える必要がある大企業は、Lab Servicesの支援を受けていますし、何百ものLPARをプロビジョニングしたいという場合も同様です。
「初めてのAI環境の導入なのかもしれませんし、」とJarman氏は付け加えます。「あるいは、初めてのOpenShift環境の導入なのかもしれませんが、概して言えば、システム ソフトウェア関連での支援ということになります。IBM i について言えば、我々のチームは、PowerHAのようなレジリエンシーを専門としています。当然、セキュリティも専門です。Db2最適化やDb2モダナイゼーションでの情報管理、そして今はDb2 Mirrorです。また、全般的なインフラストラクチャーの最適化、さらには仮想化やパフォーマンスの最適化もあります。特にIBM i に関しては、このような分野に重点を置いています。」
IBM Lab Servicesのクライアントの中には、IBM i およびPower Systemsサーバーを最大限に活用している大企業が数多く見受けられます。そうした企業の多くは Large User Group (LUG)のメンバーとなっています。LUGは、100社以上の大企業が参加しているグループで、毎年3回ロチェスター ラボを訪れ、IBMから最新の技術情報を得るとともに、次にどのようなものを必要としているかについてIBMの開発者にフィードバックを行っています。
「LUGのメンバー企業は、インフラストラクチャー チームに優秀な人材を擁しています」とJarman氏は述べます。「彼らは高度な技術スキルを持っています。彼らのようなクライアントがLab Servicesを訪ねてくるときは、パフォーマンスやデータベースの最適化など、非常に特殊なニーズを抱えています。そのようなケースは、最も経験豊富なクライアントと同じレベルで話しをし、付加価値を提供することができる絶好のチャンスです。」
Lab Servicesのコンサルタントになるための主な要件は、深い技術的な専門知識を有していることです。コンサルタントには、IBMの研究開発部門での勤務の中でそうしたスキルを身に付けてきた者もいれば、技術営業の業務を通じてスキルを身に付けてきた者もいる、とJarman氏は述べます。Lab ServicesのコンサルタントのIBMにおける経歴はそれぞれ異なっており、コンサルタントには、それまでの業務経験を十分に活かす形でLab Servicesの顧客への対応に取り組むことが求められています。それがLab Servicesの付加価値のもうひとつの面だとJarman氏は述べます。
「コンサルタントはそれぞれ独自の幅広いネットワークを築いています。自身で築いたネットワークであるからこそ、経験をシェアし、技術情報へアクセスすることができるのです」と彼は述べます。「そのため、そうしたネットワークは誰もが活用できるというものではありません。けれども、我々のチームのメンバーは皆、IBMの他の技術者とは素晴らしいネットワークと大きな信頼で繋がっていると言えると思います。」
平均的なLab Servicesのコンサルタンティング業務は、約1週間の期間で行われ、料金は17,500ドル~22,500ドルほどです(最近、 Lab Services料金の値上げが実施されたようです)。コンサルタントは、業務の一環でハードウェアやソフトウェアのインストールや構成を行うこともあります。けれども、Lab Servicesの業務で重きが置かれるのは、クライアントに代わって1つの作業を完了することではなく、クライアントが使用しようとしているどのような新しいテクノロジーまたはアプローチについても、必要な情報が確実にクライアントにもたらされるようにすることです。
「この業務の利益率が非常に高いのは、クライアントの支援をするのであって、クライアントの仕事を代行するのではない、という点を気に入っていただけているからです」とJarman氏は述べます。「つまり、1週間のスキルのシェアリング サービスであり、ベスト プラクティスや経験知識のシェアリング サービスということです。しかし、クライアントの会社を後にするときには、クライアントは自身の業務を自力でこなせるようになっています。」
特定のクライアントの業務に携わっていないときにも(あるいは世界各地への移動の際も)、コンサルタントは現状にあぐらをかくことなく、次に備えています。IBMの顧客は世界各地にいますが、そのうちのどの顧客へのコンサルタンティング業務にも携わっていないときは、トレーニングを受けてスキルを磨いているか、IBM Systems Technical University(実質的にLab Servicesによって運営されている)を通じて他のコンサルタントのトレーニングを行っているかのどちらかです。
「Lab Servicesと他のサービス チームを見比べてみると、Lab Servicesのコンサルタンティング スキルへの投資には、他のグループに比べて多くの時間が費やされていると言えます」とJarman氏は述べます。「これは新たなテクノロジーの常に先端にいるからであり、常に投資し続ける必要があるのです。」
たとえば、現在、Lab Servicesで投資を強化しているのはAI技術です。具体的には、強力なIBM Power Systems AC922サーバーにおけるWatson Machine Learning(旧称PowerAI)の構成や展開に関するコンサルタンティングの専門知識の構築などです。
「この3年間、AIチームを作り上げるために、普段行っているコンサルティング業務に加えて、スキルへの大幅な投資を行う必要があったことはお察しいただけると思います」とJarman氏は述べます。「重点を置いているのは、コンサルタントのスキルの育成です。結局のところ、Lab Servicesを差別化するのはコンサルティングのスキルであるため、可能な限り、磨いておくことが必要なのです。」
IBM Lab Servicesの詳細については、 http://www.ibm.com/it-infrastructure/services/lab-servicesを参照してください。