IBM:MSPのIBM iスタックに月額料金体系を新たに適用
過去数年間IBMはIBM iのホスティングとクラウドビジネスを構築しているマネージド・サービス・プロバイダー(MSP)に適用する料金体系を折に触れてどちらかと言えば望ましくない改訂を行ってきました。現行の問題は、IBM iスタックに対して永久ライセンス料にSoftware Maintenanceの年額料金を加える体系になっていることです。しかしながら、MSPは実情として顧客に月額の料金体系の適用を与儀なくされています。これによりMSPは初期投資とキャッシュフロー間に巨額のギャップが生じてIBM iクラウドの構築コストが非常に高額になる可能性があります。
IBM iとプロセッサーの使い易さを考えれば、またその上でミッションクリティカルなアプリケーションを稼働させている顧客のインストールベースの大きさを考えると、IBM iのクラウドが増えてゆくのは当然の成り行きといえます。しかしながら、IBM iに対する料金は1コアにつき数千ドルから数万ドルの開きがあり、もちろんこれにはリレーショナル・データベース・マネージメントシステムが含まれますがこのシステムにはユーザーごとの料金は含まれません。小規模のIBM iソフトウエア・ティアのローエンドマシーンに関しては、IBM iのマシーンで稼働しているアプリケーションの使用料は1ユーザーについて$250です。
2012年のIBM i 6.1を振り返ると、IBMはIBM iのライセンスに意外に低い価格を適用しており、さらに驚くことにMSPに向けたAIX Enterprise Editionの価格と一致していました。当時MSPはデータベースを含めてIBM iを、マシーンのサイズに関係なく、1年間1コアにつき驚くべき低価格$2,000で得ることができました。そしてこの価格はIBM i 7.1に持ち越されました。もしこの価格がPower iのクラウド構築を促進したとすれば、これは良い考え方だったと私は思います。しかしながらOS/400、i5/OS、IBM iの、このプラットフォームに忠実であった世界中の125,000ショップも同じ価格で優遇されるべきであったと私は思います。IBMは6月第1週、IBM iスタックの新たな価格を設定してMSPに適用しました。内容はベースとなるオペレーティングシステムとデータベースに対する1四半期・1コアあたり$500とは全く異なる料金体系です。
IBMが発表した新しいMSP価格体系の詳細は、発表レター(announcement letter 215-212)をご覧ください。これにはベースのオペレーティングシステムと統合されたデータベースに対するライセンス料だけでなく、Software Maintenance 料金が含まれています。またこの新料金体系にはエンドユーザーのソフトウエアに対する制限の無い権利が含まれると共にIBM iのショップが使いたいと欲している数多くのキーとなるソフトウエアパッケージが含まれています。これらMSPの新料金体系に含まれるパッケージはIBM i Access Family、DB2 Query Manager とSQL Development Kit、Backup、Recovery、Media Services、Advanced Job Schedule、及びPerformance Toolsです。
以下は新MSP料金体系の概要です。
ご覧のとおり、1四半期・1コアに対する$500の単純体系とは大きく異なっていますが、内容は厚くなっています。以前の体系と比較して良否を考察することは、もはや料金の検討段階ではなく決定しているので意味の無いことだと思います。重要なことはこの新MSP料金体系が単に永久ライセンスを購入しSoftware Maintenanceを支払うことに実際に適用できるのかです。そして比較に特殊な計算を伴うことです。理由は、全てがマシーン、搭載されている他のシステムソフトウエア、及びマシーンにアクセスするユーザー数に依存しているからです。あえて言えば、ユーザー数が多い場合は1ユーザーあたりの料金を考えると多分有利でしょう。
上記のチャートで、36ヶ月を期間として月ベースのソフトウエアのライセンスコストを計算してみました。期間36ヶ月は1990年代にIBMがメーンフレームのソフトウエアの月額ライセンス料を計算するのに使っていた期間だからです。新料金体系で個々のメーンフレームのソフトウエアに永久ライセンスを取得して36ヶ月で割った場合、IBMが1990年代に課金していたライセンス料の月額に大変近い数字になります。
もし、全てのコアがこの特別MSP価格で提供されてきた6種のプログラムの全てを必要とし、最上位の12コアPower8チップを使っているマシーン一台及び最も使われるマシーンであるローエンドのP05マシーンで使った場合、このソフトウエアスタックの3年間のコストは驚くべく2百11万ドル(約2億5千万円)になります。この仮定におけるマシーンの場合はユーザー数が非常に多いことが考えられるので経済的には納得できます。しかしながら、私はこれに対して他に関心を持ち、Amazon Web Servicesを当たってみました。先日発表されたばかりの大規模で高額のクラウドEC2 M4です。トップエンドのm4.10xlargeインスタンスタイプを選択した場合、40スレッドと20コアを有しておりPower S824のパフォーマンスとほぼ同レベルで、3年間オンデマンド価格で稼働させた場合、コストは2百17万ドルになります。
IBMが同様の計算で価格体系を考え出したかどうかは判りません。P10とそれ以上のマシーンはコアあたり非常に高額で、AWSは均一料金です。また、IBMは2ソケット以上のマシーンは提供しておらず、顧客はAWSクラウドで単一の仮想マシーン専用に40スレッド以上を使うことはできません。IBM iのMSPは良いと思えば全マシーンを時間ベースで売ることもできます。
いずれにしても、新MSP料金はIBM i 7.1と7.2及びそれ以降のリリースで使うことができ、Power7、Power7+及びPower8プロセッサーをベースにしたマシーンに適用できます。顧客は選択すれば同一マシーン上でソフトウエアを月額ベースのライセンスバージョンと永久ライセンスバージョンを組み合わせることもできます。サービスプロバイダーはライセンスをひとつのマシーンから他のマシーンに移行させることは許されません。