VMControlを使ってPower Systemをクラウド対応にする
IBM Systems Director VMControl 2.4 で仮想化リソース共有に対応するシステム・プールを作成して管理する
つい最近まで、善意ある人たちから「まったく君はいつも雲 (クラウド) の中に頭を突っ込んでいるように、空想に耽っているなぁ」などと、行動を改めさせるようなコメントをもらうと、悲しくも私はその通りと認め、現実に目を向けて最善の努力で仕事を続けよういう決意を再確認していました. . . 少なくともしばらくの間は。(でも正直に言えば、音楽、ギター、発明、旅行を通してできることを夢見ることは、現実よりはるかにましな場合があります。) しかし、今では私の「雲 (クラウド) の中に頭を突っ込んで空想に耽っているような」ことは、IT 関連の友人がそのクラウド環境の管理において少しでも楽に仕事をしようとすることにおいて、彼らに対する私の献身を肯定するものだと考えています。
IBM Power System をベースにしたクラウド環境における重要なコンポーネントの 1 つとして、サーバー・システム・プールがあります。サーバー・システム・プールでは、仮想化によりシステム・リソースを組み合わせて共有できます。今月号では、ワークロードを意識した読者自身のシステム・プールをどのように作成して、展開できるか少し詳しくお話ししてみようと思います。システム・プールを作成して管理するツールとして IBM Systems Director VMControl を使い、AIX、Linux on Power、IBM i の各ワークロードをそのクラウド環境に取り込み、展開する方法について詳しくお話しします。
Power Cloud をセットアップする
IBM Power System をサーバー・システム・プールにプールできるようセットアップするには、VMControl を使う前に多少準備が必要です。サーバー・システム・プールの概念を把握するために、まずそれによって何ができるか考えてみましょう。サーバー・システム・プールでは次のような作業ができます。
- リソースの可用性をモニターして、展開する仮想アプライアンスの配置を決める
- (ストレージ・システム・プール内で指定されたストレージ・ポリシーに任意に基づいて) 展開中に、ストレージおよびネットワークのリソースを仮想サーバー (パーティション) に割り当てる
- サーバー・システム・プールが、仮想アプライアンスのイメージを新しいインスタンスとしてその割り当てられたストレージにコピーできるよう、イメージ・リポジトリーにアクセスする
- 一意のインスタンスになるようイメージをカスタマイズする (ホスト名、IP アドレスなど)
- 各物理サーバーのヘルスをモニターする (PFA イベント、リソース使用状況など)
- 物理サーバーに問題が発生した場合に、仮想サーバー (パーティション) を他の物理サーバーに自動的に再配置する
- 使用率がピークにあるホストから、プール内にある使用率が低いホストにワークロードを再調整することで、各ホストを任意に「最適化」する
サーバー・システム・プールを構成する前に、お使いの Power System 環境でいくつかセットアップしなければならないことがあります。
- 共有ストレージ: 以前コラムでもお話しましたが、私はストレージのエキスパートではありません。ただ、FlashCopy をサポートする SAN を通して共有ストレージをセットアップすると、驚くような速さで非常に大きなイメージを展開できると認めざるを得ないような IBM Storwize V7000 の動作を確認したことがあります。
- 仮想入出力サーバー (VIOS): ストレージやネットワークがどれだけ複雑であろうと、VIOS を通してリソースを共有すると、一意のネットワーク構成を保ちながら、物理サーバー間で仮想サーバーを自動的に再配置する際に必要な柔軟性がシステム・プールに備わります。
- ライブ・パーティション・モビリティー: これにより、システム・プールは仮想サーバーを自動的に再配置します。IBM PowerVM ライブ・パーティション・モビリティーについて詳しくは www.redbooks.ibm.com/abstracts/sg247460.html をご覧ください。
Power System 環境が準備できたら、AIX、Linux on Power、または IBM i 仮想サーバーから仮想アプライアンスを取り込むことができます。仮想サーバーには複数のディスクを接続できます。すべてのディスクを取り込むよう指定したり、特定のデータ・ディスクに「必要なもの」を指定したりできますが、展開プロセス中に使用するディスクを正確にポイントする必要があります。これは 1 つの共有データ・ディスクを、多数の仮想アプライアンス展開からポイントできる、共有データベース向けの優れたオプションです。
最後に、マルチパス入出力構成と N-Port ID Virtualization (NPIV) 構成を取り込み、展開および再配置中に受け入れることができます。
基本的に、Power System の堅固な機能はすべてシステム・プールで受け入れられます。おそらく読者の方々はこうした理由で Power System を購入したでしょうから、Power System をベースにしたクラウド環境でそれらすべての構成とカスタマイズを保持するのは当然です。VMControl を使用して Power System を最大限に利用する方法については、tinyurl.com/6tfoe7t をご覧ください。
最後に VMControl を開き、「Create System Pool」をクリックして、最初のホスト (物理サーバー) をサーバー・システム・プールに配置するよう指定します。
共有ストレージが置かれている場所、ホストが使用する仮想化の種類 (PowerVM、KVM など)、さらにホストにあるプロセッサーのタイプを確認するため最初のホストが分析され、選択されたシステムすべてが同時に機能するようにします。次に「Next」をクリックし、追加した最初のホストのプーリング基準と一致し、プールに含めることができる他のすべてのホストを表示します。最後に「Finish」をクリックしてシステム・プールを作成したら、展開する準備は完了です。
新しいシステム・プールをさらにカスタマイズするには、「Edit system pool」をクリックし、図 1:システム・プールの編集 のような画面を表示します。この画面で、カスタマイズおよび最適化の要件を制御できる設定を有効にできます。「Automatic optimization」オプションに注目してください。この設定を有効にします。
システム・プールは引き続きリソース使用率をモニターします。ホストの使用率が一定時間高い場合、リソース使用率を最適化し、動作しているワークロードのバランスを取るために、システム・プールは自動的に仮想サーバーを再配置します。
取り込みと展開に備える
自分独自の仮想アプライアンスを取り込むには、まず自分のイメージ・リポジトリーを作成する必要があります。AIX イメージの取り込みと展開の際 Network Installation Manager (NIM) に頼ることができますが、VIOS 共有ストレージを使用して、ストレージベースの取り込みと展開に対する新しいサポートを使用することを検討した方がよいでしょう。そのためには次のような手順が必要になります。
- SAN リソースをすべて正しく Systems Director のインベントリーに登録します。
- イメージ・リポジトリーの場所にすると決めた VIOS を見つけます。
- Common Repository サブエージェントをその VIOS にプッシュダウンします。
- VIOS リソースで Collect Inventory タスクまたは Discover Virtual Appliances タスクのいずれかを実行します。Discover Virtual Appliances ボタンはアプライアンスの詳細のみプルインし、ディープ OS Collect Inventory タスクより速く動作します。
- Create Repository ウィザードを選択して VIOS OS およびリポジトリーに使用するストレージ・プールを選択します。
VIOS 共有ストレージを使用してイメージ・リポジトリーをセットアップする方法について詳しくは、tinyurl.com/7x4mae9 をご覧ください。
IBM i の取り込みと展開
VMControl 2.4 の新機能に IBM i 環境の取り込みがあります。これは IBM i のお客様には素晴らしいニュースです。新しいインスタンスを追加する時間が 1 分ほどに短縮されているためです (本当です!)。Power System を FlashCopy を搭載した Storwize V7000 で VMControl 2.4 をテストしたところ、100GB の IBM i 仮想アプライアンスを 26 秒で展開できたと言えるのですが、自主的に証明していなかったため、公式なデータにはしたくないと考えています(でも、速かったです!)。つまりこれは、展開したい IBM i アプリケーションを備えた好みの仮想アプライアンスを選択し、「Deploy」をクリックして VMControl にパーティションを作成させ、ストレージを割り当てて、ネットワークを構成し、新しい IBM i インスタンスを非常に短時間にカスタマイズできることを意味しています。IBM i インスタンスが展開されたら、インスタンスが再始動してすべての変更 (ホスト名、IP アドレスなど) を適用するまで待つ必要があります。
では、VMControl を使用して IBM i 環境の取り込みと展開をセットアップするのに必要な作業を見てみましょう。まず準備段階として、アクティベーション・エンジンを IBM i に追加する PTF SI44642 をインストールします。アクティベーション・エンジンは基本的に、IBM i オペレーティング・システムが VMControl を使って新たに展開されたら、そのカスタマイズ方法を認識する小さなプログラムです。PTF のインストールが終わったら、セットアップに進むことができます。
まず、IBM i パーティションを VMControl 仮想アプライアンスに取り込みます。 IBM i インスタンスで、次のコマンドを端末か Systems Director 経由で実行します。
CALL PGM(QSYS/QAENGCHG) PARM(*ENABLE)
このコマンドを実行すると、アクティベーション・エンジンが有効になります。これが終わると、VMControl が IBM i インスタンスを取り込むことができるよう、インスタンスの電源を遮断する必要があります。VMControl に移動し「Capture」をクリックします。図 2 に示すように、単純に、取り込む IBM i インスタンスを備えた仮想サーバー (パーティション) をポイントしたら、それで終了です。選択した IBM i 仮想サーバーの電源が切断されていることを再度確認します。
取り込みが開始すると、IBM i インスタンスで構成されたすべてのディスクがイメージ・リポジトリーにコピーされます。取り込み中、あるディスクを取り込み、他のディスクは必要に応じて参照するよう任意に指定できます。これによって、今後の展開中に共有データ・ディスクにポイントできるようになります。
IBM i 仮想アプライアンスを展開する準備ができたら、選択した仮想アプライアンスを選択し、「Deploy Virtual Appliance」をクリックするだけです。仮想アプライアンスにはパーティションを作成し、(NPIV 構成を含む) ストレージおよびネットワークを構成するすべての基準が備わっているため、展開作業自体は極めて単純に実行できます。多少混乱したのが Storage Mapping ページでした。V7000 および FlashCopy を使用した超高速展開を有効にする SAN ストレージを正しく使用するには、「Assign to Storage Pool」をクリックして取り込んだディスクをストレージ・プールに割り当てる必要があります。これを実行すると、図 3:ストレージ・プールの選択 のようなページが表示されます。
私には、明らかにウィザードにストレージ・プールをあらかじめ選択させているように見えました。しかし、このウィザードの設計者は、ストレージがどこからきているのか知ることが重要だと感じたので、ウィザードで何回かクリックする部分を追加したのです。それは、詳しく見れば納得できます。取り込まれた仮想アプライアンスがこの IBM i インスタンスを成功させるために必要なすべてのネットワーク要件を収集したため、ネットワーク構成は自動的に行われています。
全体的に見て、この手順は IBM i インスタンスを追加で作成する簡単な方法を提供しています。本号ではシステム・プールにターゲットを絞って説明していますが、もちろん、システムがイメージ・リポジトリーとストレージを共有している限り、スタンドアロン Power System にターゲットを絞ることができます。
AIX および Linux on Power の取り込みと展開
AIX を取り込み、展開する機能はしばらくの間使用できました。
しかし現在では、ストレージベースのプロビジョニングを使用して (例えば、Storwize V7000 を使用して) AIX および Linux on Power の展開をより迅速にセットアップしてアクティブにできます。
さらに、複数ディスクの取り込み、NPIV 向けに構成され、展開する NPIV 構成システム、マルチパス入出力による取り込みと展開などの機能はすべて新機能です。これらの機能は、基本的に取り込みと展開を「現実のビジネス」領域に移行させます。仮想アプライアンスの展開におけるダイナミックで即応性ある点を維持しながら、Power System が提供するあらゆるものを活用できるようになるためです。
IBM i の場合と同様、アクティベーション・エンジンを有効にして AIX または Linux OS の取り込み準備をする必要があります。AIX でアクティベーションの準備をする手順を次に示します。
- vmc.vsae.tar ファイルを、 IBM Systems Director サーバー (DIRECTOR/proddata/activation-engine にあります。DIRECTOR は IBM Systems Director がインストールされているパスです) から取り込む OS に転送します。
- .tar ファイルを解凍します。
- JAVA_HOME 環境変数が、アクティブな Java Runtime Environment (JRE) をポイントするよう設定されていることを確認します。
- aix-install.sh を実行します。
アクティベーション・エンジンがインストールされたら、それを有効にします。
注: すでに OS を取り込んである場合は、次のコマンドを実行してください。
rm /opt/ibm/ae/AP/*
cp /opt/ibm/ae/AS/vmc-network-restore/resetenv /opt/ibm/ae/AP/
ovf-env.xml
OS を取り込む準備ができたら、次のコマンドを実行します。このコマンドによりアクティベーション・エンジンが有効になり、正しく取り込まれるよう OS がシャットダウンします。
/opt/ibm/ae/AE.sh -reset
VMControl から取り込んで展開する場合は、前述の手順を確認してください。
操作はサポート対象のプラットフォームすべてで、ほとんど同じです。
さらにおまけとして
Systems Director ユーザーの中には、x86 サーバーの管理責任がある人もいますが、VMControl 2.4 では KVM 仮想化 x86 サーバーをフルサポートしています。つまり、割り振りをリアルタイムに編集し、Linux on IBM System x または Windows 仮想アプライアンスを、それらの KVM サーバーに取り込んで展開し、さらに自動モニターと再配置ポリシーが起動するよう、KVM サーバーをシステム・プールにプールすることもできます。
仮想化クラウド環境にもっとパワーを
VMControl で Power System 環境が、いかにダイナミックになるか多少でも浮き彫りにできたかと思います。VMControl を使って、企業のクラウド環境の基盤となるシステム・プールを、どのようにセットアップして展開するかおわかりになったでしょう。