IBM、2022年秋のIBM i 向けテクノロジー リフレッシュを発表
IBMは昨日、最新の2つのIBM iオペレーティング システム(7.5および7.4)向けのテクノロジー リフレッシュを発表しました。7.5 TR1および7.4 TR7でも、セキュリティは新機能の強力な牽引役であり続けています。しかし、秋のTRでは、データベース、IBM iサービス、オープンソース、アプリケーション開発、およびアナリティクスなど、あらゆる領域にわたって数多くの機能強化がもたらされています。
セキュリティは、この数年間、CIOにとっての一番の懸念事項となっていますが、 IBM は、そうした懸念に数多くのIBM iの新機能で応えてきました。IBM i管理者向けのGUIクライアントであるIBM i Navigatorにも、新たなセキュリティ機能がいくつか追加されています。Navigatorの旧バージョンがLog4jのセキュリティ脆弱性の影響を受けやすいことから、ユーザーが旧製品を使用する理由がなくなるように、IBMは、旧製品から新バージョンへのすべての機能の移行を推し進めてきました。
そうした方向に向けて、Navigatorの新バージョンでは、監査ジャーナルのサポートが強化されています。ユーザーは、Navigator画面から監査ジャーナルの日次または週次ビューを表示できるようになりました。また、新たな監査構成画面が追加され、ユーザーは、監査コントロールについてより多くの情報を確認でき、また、監査のオン/オフの切り替えをより簡単に行えるようになっています。
IBM iの統合Webサービス(IWS)サーバーを介したWebサービスの利用が、2つの新機能のおかげでより安全になります。その1つは、HTTP Strict Transport Security(HSTS)のサポートの追加です。HSTSは、サーバーへのコンテンツの要求時にHTTPSの使用を求めるWebセキュリティ ポリシー メカニズムです。もうひとつは、Cross-Origin Resource Sharing(CORS: クロス オリジン リソース共有)のサポートです。CORSは、ドメイン外部からのコンテンツへのアクセス時に、ユーザーがセキュアな接続を確立できるようにするW3C仕様です。
NVMeデバイスに保存されるデータの保護が、パスワードの新たなサポートのおかげでより容易に行えるようになります。IBM iによって使用されているNVMeデバイスは、すべて自己暗号化ドライブですが、これまでは、データを暗号化および復号化する唯一の方法は暗号鍵によるものであったものの、暗号鍵自体は保護されていませんでした。7.5 TR1および7.4 TR7では、ユーザーは、TCG(Trusted Computer Group)のOpal SSC(Security Subsystem Class)によって定義されているように、パスワードを使用できるようになりました。
IBMは、IBM i 7.5、7.4、および7.3(1年以内にサポート終了)向けのCommon Cryptographic Architecture(CCA: 共通暗号化アーキテクチャー) Cryptographic Service Provider(CSP: 暗号化サービス プロバイダー)もアップデートしています。IBMは、IBM 4769リリース7.3をサポートするために、CCA CSP(IBM iオプション35)のアップデートを行ったと述べています。
Db2 for iデータベースには、新たな関数がいくつか加わっています。その一例が、Geospatial Analytics(地理空間分析)と呼ばれる機能の追加であり、これにはIBM Watsonの地理空間関数が含まれています。「投影不要の楕円体サポートおよびネイティブ ジオハッシュが含まれるこれらの分析関数により、IBM iクライアントは簡単に、SQLを使用してWatson Geospatialテクノロジーを活用できるようになります」とIBMは述べています。
また、Db2 for iデータベースには、リモートのIBM iサーバーでユーザー定義表関数を実行するためのREMOTE TABLEのサポートも加わりました。また、システム生成の値に対するREPLICATION_OVERRIDEグローバル変数も追加されています。これは、変更管理ベンダーがユーザー作成の表を追跡する際に役に立ちます。関数関連のデータベース機能強化には、他にも、JSON、タイムスタンプ、月の最初の日に関する3つの新たな組み込みスカラー関数、およびQSYS2 HTTP関数があります。
IBMは、データベース エンジニア向けのDb2 for iの機能強化もいくつか提供しています。リストの筆頭は、SELF(SQL Error Logging Facility: SQLエラー ロギング機能)です。また、表関数の戻り列に対してコメントを付けられるようになり、表およびビューについての必要な情報を提供できるようになりました。さらに、オンラインの物理ファイル・メンバー再編成(RGZPFM)コマンドがアクティブな行を見分けられるようになることも、エンジニアには歓迎されそうです。最後に、トータルなシステムCPU使用率が一定のレベル(デフォルトでは80%に設定)に到達したときに、SQL Query Engine(SQE)での並列処理の使用を自動停止するコントロール オプションが新たに提供されました。この機能はIBM i 7.5 TR1でのみ利用可能です。
サポートされている両方のリリース(7.5 TR1および7.4 TR7)で新たに追加されたIBM iサービス(QSYS2およびSYSTOOLSの新たなコマンドなど)は15種類あります。両リリースで機能強化されたIBM iサービスは8種類あります(いずれもQSYS2のIBM iサービスです)。また、新たなDb2 for iサービス、WLM_SET_CLIENT_INFOプロシージャーが、両リリースで追加されています。これにより、SQLクライアントの特殊レジスターのサブセットをより簡単に変更できるようになります。QSYS2.MTI_INFO()は、IBM i 7.5に対してのみ追加されます。これは、アクティブなSQEの保守済み一時索引(MTI: Maintained Temporary Index)に関する情報を返します。
Access Client Solutionsの機能強化は、両方のオペレーティング システム向けに行われています。新機能には、可変長データ タイプでの列レベルの統計情報の追加、ジャーナル レシーバーを削除する際の新たなオプション、および「SQLスクリプトの実行」機能に対する様々な機能強化などがあります。また、クライアント マシンでJavaランタイム環境(JRE)を自動更新するオプションも追加されています。さらに、IBMは、Accessアプリケーション パッケージのアップデートも行っています。これにより、LinuxおよびMacOSクライアントとIBM iサーバー間のODBC接続でTLS暗号化がサポートされるようになります。
「IBM I Main Storage Dump(主記憶域ダンプ)処理」へのZLIBアルゴリズムの追加により、現行の圧縮オファリングと比べて圧縮機能が向上しています。Power10マシンで使用した場合、パフォーマンスはさらに向上するとIBMは述べています。
アプリケーション開発の領域では、サポートされているすべてのOSリリースで、Rational Development Studio for i(RDS)およびRational Developer for i(RDi)の両方に対して機能強化が行われています。RPGコンパイラーは、いくつかの新たな組み込み関数、オプション、およびパラメーターの追加によって強化されています。また、RDSでは、COBOLにも、CCSIDの機能強化が追加されています。
RDiに関しては、IBMは、現在、バージョン9.6.0.12をリリースしており、このバージョンでは、一般的に使用される項目、コミュニティからの要望、および開発者生産性という、3つの領域にわたって機能強化がもたらされています。
IBM i Modernization Engine for Lifecycle Integrationとしても知られる、Merlinについても朗報があります。今回のリリースで、Merlinにデバッガーが追加されます。デバッガーは、この新ツールでの生産性向上のために開発者にとっては不可欠な機能です(開発のスケジュールが早められたために、デバッガーは最初のリリースには含められませんでした)。Merlinの稼働には、IBM i 7.4または7.5が必要です。
IBMは、BRMS(バックアップ・リカバリーおよびメディア・サービス)オプションの改善も行っています(これは定期的に行われています)。今回のリリースでは、BRMSレポート機能を強化する新たなSQLサービスと、並行バックアップ ジョブが同じボリュームを使用することを防止する、新たなメディア ボリューム オプションが追加されます。
PowerHA SystemMirror for iにも、7.4および7.5の両バージョンで、新たな機能強化が追加されています。すなわち、新たなWebベースのGUI、ユーザー プロファイルおよびユーザー属性の同期による管理機能の向上、およびFlashCopy関連の機能強化です。
Db2 Mirrorには、ジョブ待ち行列内のジョブを追跡して複製する機能が追加されました。これは、災害発生時に有用となる重要な機能です。また、Db2 Mirrorクラスターで遠隔地ミラーリングを使用してIFSを複製する新機能(以前はIFSの複製にはPowerHAが必要でした)や、新たなRoCEアダプターのサポートも追加されています。
最後に、IBMは、オープンソースの分野で次の2件について対応を行っています。まず、IBM iでNode.jsバージョン18がサポートされます。バージョン18は、長期サポート(LTS)リリースであるため、しばらくは利用し続けることができるはずです。また、IBMは、PASEで利用可能なオープンソースのtn5250エミュレーターでのTLSサポートを追加しました。これにより、ユーザーは、データがセキュアであるという安心感を持って使用できます。
IBM i 7.5 TR1および7.4 TR7は、いずれも12月2日に利用可能になる予定です。また、両オペレーティング システム向けのPowerHA SystemMirrorの追加機能については、その2週間後の予定です。
今後数週間のうちに、TRに関するさらに詳しい情報をお届けする予定です。さしあたっては、発表レターをご覧になることをお勧めします。7.5 TR1の発表レターは こちらのリンク 、7.4 TR7の発表レターは こちらのリンクからアクセスできます。また、7.5 TR1についての詳細は 「IBM Support」のこちらのページ 、7.4 TR7についての詳細は 「IBM Support」のこちらのページでもご覧になれます。